5.《ネタバレ》 密入国少年が家に紛れ込んだところで、「あ、そう」レベルで済ませている(どころか、その後少年をほっといてとっとと外出している)シーンが何とも強力。この超然とした主人公の立ち位置が、その後ラストまでの展開を一気に必然性あるものとするほどのパワーがある。また、密入国の背景とか、警視とカフェのマダムの過去の経緯とか、妻の病気の詳細とか、そういう余計な背景とか感情描写をすべて切り捨てている潔さも良い。 【Olias】さん [映画館(字幕)] 7点(2017-11-07 02:34:25) |
4.《ネタバレ》 ストーリーが絶望的な状況から、どんどん良い方向へ進んで行く不思議な映画。登場人物が粋でみんないい奴なのだが、行動がとても奇怪に感じました。あれだけ外に出ないように釘をさされていたにもかかわらず、すぐに家を抜け出し靴みがきまで行う黒人少年。警察も家宅捜索で少年を匿っているのが分かっているのに何故か引き返してしまう。あげく、船で密航しようとしている黒人少年を発見したのに見逃してしまう始末。みんな、組織や人の忠告に従うことなく、己の意思の赴くままに行動をとるので結構観ていて爽快。「自分を信じ行動することこそ明るい未来は開けるのだ」と言わんばかりのカウリスマキ監督の演出には、人命に関わるような事象でさえマニュアルが存在し、機械的な行動しかとれない世の中に対する痛烈な批判を感じます。 【スノーモンキー】さん [DVD(字幕)] 7点(2014-12-16 00:17:13) |
3.ル・アーヴルは南のマルセイユとは反対側の北の港町。 当地在住の歌手リトル・ボブを使いたくてここにしたという「初めに歌手ありき」の土地選びとか。 初老の靴みがきマルセルが少年イドリッサを救おうとするのが、情が移ったというより使命感だけで動いているように見え、その方が立派かもしれないですがイドリッサとの間にもう少し何か見たかった気はし、そこがメインではないのだろうけど。 不治の病の妻アルレッティが口紅を頬紅がわりに夫に血色よく見せようとする気遣いや、近所のお店の人たちがマルセルの心意気に賛同して商品を気前よくふるまうもよし。 主演のアンドレ・ウィルムは「仕立て屋の恋」では刑事役でしたが、ここでの刑事はジャン=ピエール・ダルッサン。 黒づくめでマフィアのよう、できるだけコワモテに見せてるので最初はちがう人かと。 アル中の失業者とか国鉄あがりの庭師などとはずいぶんちがうので「この役どうなの?」でしたが、なるほど。 黄色いバラにそそぐ涙かと思いきや、白い桜は善行への報いの象徴でもあるのでしょうか。 【レイン】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-10-07 07:00:00) |
2.密告者はいても、マルセルと彼の周りの人たちは皆いい人たちばかりだ。最後には意外な人物まで人情味あふれるというか、おとぎ話の中の人物にさえ見える。これこそカウリスマキと言えるだろう。 【ESPERANZA】さん [映画館(字幕)] 7点(2012-07-24 16:19:00) |
1.《ネタバレ》 密入国者の少年を助けようと奮闘するマルセル。考えると義は密告者にあるのですが、奥さん、ベトナム人、パン屋さん、八百屋さん、パブの主人、犬のライカといった損得抜きの思いやりに満ちた面々との関わり合いを見ると、密告者の何とも寂しい姿が強烈な印象を残します。警視の胸中にも同じような寂しさがあったのかと想像します。結末はお伽噺のようでした。毎年季節が来れば桜は咲き、毎年二人で眺めるのでしょう。心地良いラストショットです。 |