1.《ネタバレ》 この映画が原爆から僅か8年目に創られたことに驚く。そしてその目的が“原爆の記憶を風化させないため”ということにも驚く。
日本人の適応能力は素晴らしい物があるが、それと同時に忘れやすさも素晴らしいと思う。戦争が終わり、日を追うごとに戦争当時の痛みを忘れ、世の中にはどんどん欧米式の新しい建物が立ち、学生たちはGHQの指導の元で、戦後の新たな教育が施されていた時代。日々変わっていく世の中で、つい隅に追いやられてしまう過去の記憶。
鼻血を出す女生徒。原爆体験者の数を聞き、クラスにこれだけ居たんだと驚く教師。ABCC(原爆傷害調査委員会)は被爆者の診察はしても治療はしてなかった事実。この忘れやすさ、辛いことは過去のものとして、綺麗さっぱり前を向いてしまう辺りが何とも日本人臭い。
原爆は甘え。体験した人にはホントきつい一言だ。被爆者が口を閉ざすのも解る。日本の復興のスピードもこの当時から早い。東北震災から復興のスピードを見ても、8年目ともなると震災当日くらいしか思い返さないくらい、過去の出来事と化してしまっていたと思う。そして先生のように、未だに震災の被害から回復していない人に驚いてしまうとか。ホント今の時代と変わらないかも。
原爆当日の広島の様子、阿鼻叫喚の地獄絵図は凄まじく、また撮影の経緯も当時の広島の人達の気持ちが籠もっていた。自分があの日、目にしたものを再現して、より多くの人に映画として観せる。
戦災孤児。弱い孤児たちがグループを作って、米兵に物乞いして逞しく生きる姿。頭蓋骨について、はだしのゲンでも出てたと思う。本当かどうか定かではないけど、本当なら、アメリカ人が日本人をどのような目で見ていたかが解る。そしてそれは最初の“どうして白人の国ドイツではなく黄色人種の国日本に原爆が落とされたか”に繋がる。
当時は朝鮮戦争の真っ最中。幸夫は仕事で砲弾を作り、パチンコが戦争の資金になるって女の子も言ってた。
平和のために戦争に手を貸さない。結果それが反米だとして、広島に原爆を落としたのはアメリカなのは、未来永劫変わることはない。それを絶対に忘れない為に、その想いを込めて、この映画は創られたんだろう。