7.レスリー・チャンが危うく、罪深い。
この俳優が自ら命を絶ってから10年が過ぎ、初めて観たこの映画で彼が演じた“ヨディ”という男と、彼自身に対して、まったく同じようにそう思う。
ウォン・カーウァイ×レスリー・チャンの組み合わせ思い出されるのは、やはり「ブエノスアイレス」か。
10年前に、俳優の訃報に触れ、初めて鑑賞に至ったことを覚えている。
当時、僕はまだまだ若輩者で、同性愛に対して軟弱な拒否感を持っていた頃に観たのだが、そんな拒否感など一蹴する色濃さに圧倒された。
久しぶりに、ウォン・カーウァイの映画世界に息づくレスリー・チャン、アンディ・ラウ、そして一寸だがトニー・レオンの姿を見て、胸が熱くなった。
そこには、性別の価値観を超えた憧れとときめきが満ち溢れている。60年代の香港の鬱蒼とした熱気と湿り気が、そういった感情を更に濃くしていく。
場当たり的なストーリー展開は、そのまま登場人物たちの錯綜する人生を表しているように見えた。
いつになく散文的でまとまらない。この思考がままならない感じも、この映画を観た後では相応しいとすら思える。
ラストふいに登場し、謎のシーンを残すトニー・レオン。彼が主演予定だったという幻の続編も観てみたかったな。