1.《ネタバレ》 冒頭から見せ場の連続で「ありがとう、これだけ見せてくれたら満足です」と言いたくなるほどのボリュームであり、かつ、X-MEN特有の重苦しい空気は健在であるためバカっぽくなりすぎることもなく、夏の大作映画としては十分なクォリティにあると思います。2000年の第一作からシリーズに付き合ってきた身としては、クライマックスの新生X-MEN結成には血が騒ぎ、もっともっと続編を作ってくれという心境にさせられました(新3部作は本作で最後らしいのですが)。
ただし、大味な破壊がメインとなるためローランド・エメリッヒの映画とさして変わらないルックスとなっており、ミュータント達の能力を面白く見せるというこのシリーズの強みが損なわれている点は少々残念でした。また、新キャラ多すぎで行動原理が不明な人物が何人かいたり(エンジェル、サイロック、ストーム)、アポカリプスという明確な悪役を出したために理念vs理念という本シリーズの特色が失われたりと、娯楽性を全面に出すぎたためにじっくり作りこむべき部分が犠牲にされたという印象も受けました。また、個々のキャラクターに絞って見るとさらにキャラ造形の弱さが目立ち、『X-MEN2』や『ファースト・ジェネレーション』では達成されていた娯楽とドラマの抜群のバランス感覚が本作では失われています。
【プロフェッサー】敵の手に落ちて悪事に利用されるといういつものパターン。世界最強のテレパスという割にアポカリプスの復活やマグニートーの活動再開という大イベントを感知できなかったり、X-MENの総司令官でありながら最終決戦で敵に打撃を与えられなかったりと、いろいろとダサイ。
【マグニートー】何かに激怒して暴れ回るが、知り合いに説得されて改心するといういつものパターン。それでも今まではリーダーとしての威厳だけはあったものの、今回はアポカリプスの手下の一人になるため、小物感が出てしまっています。また、家族を失くした件で同情を誘うものの、若い頃にクィックシルバーとその母親を捨てていたという過去が判明するため、せっかくの同情が薄まってしまいます。「あなたにとって家族とは一体何なの?」クィックシルバーとの親子設定はオミットしたままでよかったのではないでしょうか。
【ミスティーク】ジェニファー・ローレンスがほぼ裸状態のボディスーツの着用を嫌がったのか、本作ではほとんどの場面で服を着ていて、しかも青くない。擬態能力もほとんど使わないため、本作のミスティークは一般人と変わりません。『フューチャー&パスト』での歴史改変を経て、彼女はミュータントと人類双方から英雄として支持され、プロフェッサー、マグニートーと並ぶミュータントの指導者ポジションにいるのですが、その2名のような明確な思想や目標を打ち出していないため、イマイチ何をやりたいのかわからない人になっています。
【アポカリプス】登場場面のインパクトは強く、「こいつには勝てないんじゃないか」という圧倒的な存在感を示すものの、オールマイティゆえに固有の能力がないため、バトルに入ると意外と地味。また、文明破壊の実行は基本マグニートー任せでアポカリプス自身は何もしないため、次第に文句が多いだけのめんどくさいおじさんに見えてきます。
【モイラ・マクタガード】お前のせいでアポカリプスが復活したのに、反省や謝罪はなしか。