1.《ネタバレ》 とても上手い映画、なのだけれどもイコール面白い映画とはいかないのがなんとも。
カメラがお上手です。シネスコの横長フレームでの構図をキッチリとお手本のように作り、フレームを左右に分断する事で対比し、時としてダイナミックな画を1カットで見せ(空から飛来し、着陸した飛行機のコクピットにブラッド・ピットの顔を見せるとか、通過してゆく装甲車に榴弾を投げ、炸裂し、兵士が零れ落ちる様を見せるとか)。冒頭の砂漠のシーンなどはCGらしさがモロに出てしまっていて、かなり残念な事になっておりましたが、それはごく一部の事。
ブラッド・ピットとマリオン・コティヤールの表情も印象的。スパイとして作られた表情と人としてのホンネの表情とを行き来する、その揺らぎの中に垣間見える感情の動きが謎とサスペンスを作り出して。
あと、ゼメキス作品お馴染みのアラン・シルヴェストリの音楽が今回は、そんなには「らしくない」点も良くて。毎度の音が鳴ると、それだけで現実に引き戻されてしまうわけで、日頃シルヴェストリにはそれがわりと顕著に見られる傾向があるので。
で、問題なのは物語。読めるんですよね。意外性のようなものはなくて、当たり前のように流れてゆくものを当たり前のように受け入れてゆく状態。見ていて沢山の既成作へのリンクがのんびりと頭の中に展開してゆく始末。映画では物語の創造っていうのも大切な要素な訳ですから、そこに更なるクリエイティビティが欲しかったのですが。
クラシカルな作りの中に異質なモノ(異物、かな)があるのもちょっと気になって(ブラピのおケツも異物ですな)、オーソドックスならばもっと徹底的にやってくれちゃえば、それはそれで楽しみ方があるのだけれど、と思ったのでした。