16.《ネタバレ》 内容的に派手な作品ではありません。
ですが、最初から最後まで人をひきつける吸引力のある作品です。
妙な緊張感と、気持ち悪さ、知的好奇心をくすぐる展開、様々な要素が混在しています。
登場人物たちは、脇役も含め、個人的には非常にカルトな雰囲気を感じます。正直外見は気持ち悪い。そしてアップも気持ち悪い。
ですが中身はいたってまともな人が多い。非常識な外見に、常識的な中身。
そして外見が一番スマートで爽やかな好人物が、異常殺人鬼という逆転の発想。
そんな意図はないのかもしれませんが、人は外見からでは判断できないという皮肉すら感じちゃったりして・・・。
まあ一方で、犯人の意外性に対し、その真相に対してはあまり心が動きません。なぜかって?
おそらく『誰が犯人?』ということに興味がわきづらい作品だからでしょう。もっと言うなら、誰が犯人でもおかしくないことが犯人探しへの興味を削いでいると言ってもいいかもしれません。
ですから、誰が犯人かなんてどうでも良い。むしろその動機に興味があります。なぜ『政治家』『科学者』『医者』の3人が狙われたのか。ですがその3人の共通点も中盤くらいで明らかにされてしまいます。
したがって、ミステリーという側面では、やや面白みに欠ける作品かもしれません。
ですが、話の落とし所が気になります。ですからプロットや演出は良いのだと思います。
ただ、よく時代背景がわからないのですけど、革命みたいなのが起こっていて、そっちのほうが『おおごと』に見えてしまったために、殺人事件が『大事の前の小事』みたいな印象を受けてしまいました。ちょっともったいなかったかも。
猟奇的な殺人事件というのは、平和な日常の中で起きるからこそ、その猟奇性が増すのだと思いました。
そしてタイトルに問題ありなのも同感です。
それとも、すべてはヴィドックが仕組んだシナリオというミスリードの意味でもあったのでしょうか。