17.《ネタバレ》 3時間超の長尺ではあるけど皆さんのおっしゃって
いるように飽きることなく観終えることができました。
最近の映画もドラマも時間枠に縛られている為か細部をじっくり
描いていない為に薄っぺらくなってしまっているのかもしれませ
ん。しかし、今この手の3時間枠の映画だと映画館の興行上の問題
があるのかもしれませんが。
前半の極貧の生まれで薄幸な犬飼と八重を中心とした展開を最後
まで続けて欲しかったと思います。
トロッコ列車での出会いから花やでの二人のやり取りはなんとも
いじらしく切なかったです。犬飼の爪を顔にあててもだえる八重
のシーンなどは秀逸で、長時間枠があったればこそ挿入できたシーン
ではないでしょうか。
一方、後半は健さんの登場で彼にスポットを当てざるを得ないの
は致し方ないのでしょうけど、急にご都合主義的な展開となり
安っぽい刑事ドラマになってしまった感はありました。
原作をあまり変更できない事情はあるのでしょうが、八重が舞鶴を
訪ねたところは、「樽見が八重が自分ゆすって金を要求しにきたと誤解
する色をもっと強く出し、八重を殺してしまった後で肌身離さず持って
いた10年前の新聞と自分の爪を発見し全てを悟って自ら命を絶つ」という
ように変更できませんでしたかね。書生まで殺してしまうというのは
いくらなんでも、前半の純朴なイメージからはかけ離れてしまうような
気がします。
それにしても取調べの合間にいかつい刑事が揃ってお点前が始まるという
シーンは意味不明ながらちょっと気に入りました。
ところでこの話、良く考えてみると「情けは人の為ならず」ということわざ
がアダになってしまったということになります。犬飼は薄幸の娼婦などに
同情することなくさっさと花やを後にすれば、世間からは立身出世した篤志家
として尊敬を集めて生きていけたのでしょうから。