9.《ネタバレ》 宇宙から飛来したアメーバの怪物が小さな田舎町の住人を片っ端から襲っていく。
この一文の説明で全く不足ない映画だが、“B級モンスター映画”として充分過ぎる存在感を放つ作品だと思う。
モンスター映画は大好きなので、1988年に製作されたこの映画の存在価値が極めて高いものだということは明らか。今の今まで存在すらよく知らなかったことを恥じなければならない。
オープニングクレジットで知らない名前ばかりが並ぶ中、“フランク・ダラボン”が脚本にクレジットされているのを発見し、一躍興味は掻き立てられた。
「ショーシャンクの空に」で一躍名匠の一人に名を連ねるに至ったフランク・ダラボンだが、元々感動映画傾倒の映画人ではなく、実はモンスター映画への嗜好が極めて強い人であることはもはや周知の事実。
そんな彼がキャリアの初期に携わった作品だけあって、実に堂々としたモンスター映画ぶりを繰り広げている。
幾つか特徴的なところを挙げるならば、まずは襲われ方のパターンが多岐に渡っていること。
基本的には、知能はほぼ無いと思われる謎の生物が、本能的に人間を呑み込んでいくということの連続なのだが、状況や場所のバリエーションを変えていくことで“殺され方”を多彩に描いている。
小さな排水溝に強引に引きずり込んだかと思えば、クライマックスでは大怪獣よろしく町の人々をまとめて呑み込んでいく。
モンスター映画のにおいて、人が襲われるシーンというのは“華”と言って過言でないので、それが多彩なこの映画はそれだけでも素晴らしい。
あと、“生き残るだろう登場人物”の予測が序盤において尽く外されていくということも、この映画の特徴だろう。
ヒーロー的な活躍をしていくのだろうと思われたキャラクターが老若男女関係なしに、割とあっさりとヤラレていくので、最終的に誰が生き延びるのかという緊迫感を最後まで持続させてくれる。
そしてラストは、実際に製作されるかされないかなど問題にしていない「続編」への布石。これがあるだけで、モンスター映画ファンとしてはかなり満足度が高くなる。
意外に細やかな伏線の回収ぶりも、目を引くところ。
というわけで、クオリティーが高いなんて映画では勿論ないが、B級モンスター映画ファンとしては外すべきではない映画であることは間違いない。