3.《ネタバレ》 冒頭から映像の見事さに感心する。TNGのTVシリーズは未見だが、とにかくスター・トレック映画のシリーズは映像のリアリティは二の次三の次な所があって、そこをきちんとやっているのは良かった。シンゾン役のトム・ハーディがパトリック・スチュワートと唇こそかなり違うものの鼻と頭の形がほぼ同じ。メイクだと思うが、ちゃんと似せようとする努力は買う。そのシンゾンが死期に近づくにつれて変化するメイクも説得力がある。話の中心はピカードとデータのアイデンティティをめぐっていく。基本的に無神論であるスター・トレック世界観で、人間の可能性を遺伝子や設計で決められないとするのはシリーズ最後の映画にふさわしいヒューマニズムの原点に立ち返ったテーマだ。
というわけで全体的に良質のSF映画と言えると思うだが、不満な点ももちろんある。まず映画オリジナルのレムス人の設定がご都合主義的すぎる。虐げられてた割にはえらい科学力を持っているもんだな。おまけに超能力まであるし、こいつらが下風に立たざるを得なかった理由はなんだ?造形も『ロード・オブ・ザ・リング』のオークよろしくひと目で「こいつワルモン」とわかる外見で、実際そうなんだからちょっと深みがない。あとレムスの副官がロン・パールマン?あのメイクと役柄じゃ誰がやっても同じじゃないか(笑)?稀代の怪優の無駄遣いだ。
個人的にはよくできた作品だと思うので良い目の点数付けるが、この映画がスター・トレック・ファンにそっぽを向かれる理由もなんとなくわかる。主要キャラの死についてはこの作品においては十分納得がいくものだと思う。(過去作の二例については全く納得いかないけどね!)