《改行表示》16.アルコール依存症の男が、“酒”を求めて彷徨い歩く。詰まるところ、ただそれだけの映画ではある。 がしかし、そこには「依存性」の恐ろしさを初めて映画全編に表し、描ききった映画史的な価値と、男が“酒を飲めるか、飲めないか”という至極シンプルな焦点のみで、サスペンスとして成立させてみせた巨匠ビリー・ワイルダーの手腕が冴え渡っている。 今でこそ、「アルコール依存症」という言葉自体があまりにも一般的な言葉となり、数多の映画の中においても、キャラクター造形のありふれた要素として描かれているが、あらゆる表現が「ヘイズ・コード」によって自主規制されていたこの時代のハリウッドにおいて、「依存性」の本質を描き出すこと自体が非常にチャレンジングだったようだ。 必然的に各方面からの“圧力”も大きかったようだが、それらをかわし、れっきとした娯楽映画として撮り上げ、その年のアカデミー賞の主要部門を総なめしてしまっているのだから、ビリー・ワイルダーという映画人の底知れぬ力量を時代を超えて感じずにはいられない。 物語の序盤は、甲斐甲斐しく気にかけてくれる恋人や兄の監視の目をくぐり抜けてなんとか酒にありつこうとする主人公の様をユーモラスに見ていられる。 だが、時間が経過するにつれ、徐々にアルコール依存症の男が抱える本質的な“心の闇”が、彼の表情や言動に如実に表れてくる。 コメディ要素の強かった作品の空気感が、つまびらかになる主人公の正体と共に、怖いサスペンスに転じていく。 赤ワインを傍らに鑑賞を始め、だんだんと他人事ではない戒めに神妙な面持ちを携えた或る週末の夜だった。 【鉄腕麗人】さん [インターネット(字幕)] 7点(2017-09-04 22:23:12) |
15.この映画を観るまで、アルコール依存症をこういう映画にできるなんて知らなかった。斬新だったろうが、良くまとまったのと、レイ・ミランドも演技がよかった。 【min】さん [DVD(字幕)] 7点(2013-08-15 20:14:03) |
14.「酒とバラの日々」も強烈だったけど、この映画も決して負けていないし、レイ・ミランドの迫真に迫る演技はさすがアカデミー主演男優賞。どうしようもないアル中だけど、周りは決して冷ややかでないし、決してあきらめないヘレンには頭が下がる。この映画で笑えたのは唯一オペラシーンだけ。開幕早々「乾杯の歌」で始まる「椿姫」とはなんたる皮肉。 【ESPERANZA】さん [DVD(字幕)] 7点(2012-12-02 21:16:18) |
《改行表示》13.《ネタバレ》 私は酒が飲めないので、そういう観点から客観的に見ましたが、こちらを引き込むシナリオや演出はさすが。悲惨な話のはずなのにかなり楽しめました。本作の場合、周囲がいい人ばかりなので救われていますが、現実は必ずしも甘くないはず。ラストも含め、映画としてはよくできていると思いますが、アルコール依存症に対する警鐘を鳴らすのであれば、物足りないでしょう。それとも病気は単なる道具立てで、何かに追い詰められた人間心理を描くのが目的だったのか。その点では大変よくできていると思います。いずれにせよ、終わりが弱いことに変わりはありませんが。 ちなみに、ミクロス・ローザの音楽がテルミンを使っていて『白い恐怖』に似ていると思ったら、なんと同じ年の製作でした。しかもあちらはオスカー受賞。この年ローザは『楽聖ショパン』でもアカデミー賞にノミネートされています。さすがにテルミンはないでしょうが。 【アングロファイル】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-05-26 20:46:11) |
12.《ネタバレ》 アルコールへの渇望がじわじわと確実に進行していき、まるで蟻地獄のようにシリアスな状況に陥る、その症状が酷くなるにつれ、画面はホラーのような様相を帯びる。アルコールに溺れる切欠が、作家としての己なら、それを救うのもまた作家としての己。小綺麗にまとまっている。 |
11.《ネタバレ》 怖いのね、アルコール依存症って。 友達が集まったときくらいしか飲まないアタシは、アルコール依存症って大酒飲みってこと??くらいにしか思ってなかったけど…これは完全に精神疾患ね。 不安の要因をどうにかしないと完治はしないだろうから、ドンがちゃんと本を書き上げて、なおかつそれが大ヒットすることを祈るわ…。 ってことで…希望は感じさせるけど、そうハッピーエンドでもない気がするのはアタシだけ? ところでこの映画を現代版にリメイクするなら主人公はやっぱり麻薬中毒患者になるのかしらね? アルコール→大麻→覚醒剤→コカイン…なんだか依存の対象がどんどんヘビーになってる気がするわ…。 何かに縋らなくてもいい平穏な生活が送りたいわね。 【梅桃】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-03-13 15:28:48) |
10.これを見るのは今回が四度目になります。アル中のどうしようもない主人公ですが周りの人たちが良い人ばかりでラストは立ち直ったか?のような結末でしたが、現実にはそう簡単にはいかないと思います。深酒が良くないのは分かっていても飲み始めて酔ってしまったらたら中途半端には止められないものです。 【白い男】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-03-07 10:37:16) |
9.《ネタバレ》 喜劇のテクニシャンであるビリー・ワイルダーが、こういうシリアス?な内容の作品を撮りあげ、しかもきちんと評価を受ける。いやはやさすがは名匠です。夜の病棟のおどろおどろしさ、コウモリやらねずみやらの幻覚シーンなど、白黒映画ならではの恐怖演出が際立ってますね。「このことを小説に書こう」と男は目的を持って、自殺を思いとどまるラストもまとめ方としてとてもうまいです。確かに、全編にわたって依存症となった男の苦悩を描いているだけなので、お話として面白いわけでもなく、娯楽的に楽しいストーリーではないですけど、一人の男の惨めさや葛藤を覗き見るだけで最後まで飽きさせることなく、きちんと一本の作品として成立させているのはさすが、と言わざるをえません。 【あろえりーな】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-01-31 21:47:24) |
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《改行表示》8.この映画、ブラックユーモア満載の娯楽作品と見ましたが。 多かれ少なかれ何かに依存して皆生きてるけど、あそこまで 酷いところまで行ってないよなぁって思うのでありました。 【かれく】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-01-23 22:14:47) |
《改行表示》7.《ネタバレ》 ワイルダーの初オスカー作品である。また、この作品によりニューロティック(異常心理)映画ブームになり、エポックメーキングな作品とも言えるだろう。 大酒飲みと言えば陽気なキャラクターとして描かれるのが普通であった時代に、中毒性の恐怖を題材に見事に描いたワイルダーの力はさすがといったところ。「椿姫」鑑賞中にワイングラスを追ってしまうシーンやコートが踊りだす様はコミカルであるが実に恐ろしく見せ方がうまい。また小道具の使い方はこの頃から冴えており同シーンでは取り違えたコート、未来を暗示するかのように粉々に割れる酒瓶、他に言えば隠してあった酒瓶の影、逆にくわえてしまう煙草、鏡に映ったピストルとちょっとした見せ方の工夫で焦燥感を出す手腕は実に見事である。 サイコホラーかと思わせるような演出もあって驚いたが、その甲斐あって、そしてややオーバーアクトではあるがレイ・ミランドの好演もあって十分に中毒性の恐怖を感じることが出来る。人は強い生き物ではない。何かに頼って生きていくのは当然だ。それがお酒やドラッグなのか、周りの人間なのか。ハッピーエンドとは言い難いが、希望が持てる終わり方ではある。色々考えさせられる。 【きいろのくじら】さん [DVD(字幕)] 7点(2007-12-26 20:15:12) |
6.酒に依存している様を、これでもかこれでもかと描写していて、気が付くと映画にのめり込んでいる。でも現実の女は、男が調子いい時はくっついて調子悪い時は離れちゃう、と思うんだけどな。もしこの映画のような女性が居たらその御利益にあやかりたい、ってか。 【メロメロ】さん 7点(2004-11-19 00:19:38) |
5.精神的不具や肉体的障害といったテーマに対してアカデミー賞は下駄を履かせすぎる(甘すぎる)と、淀川御大がどこかの本で苦言を呈していました。確かに、「これがオスカーかいな?」との疑問がないわけではないです。ワイルダー作品に関する世間的ランクとしても、さほど人気作とはいえますまい。ただ、アル中一歩手前の自分としては、R・ミランドの心理がよーーーく分かります。酒が欲しいとか飲みたいとか、最早そういう次元の話ではないんですよね。とにかく体内に入れないことには、呼吸することさえ苦しい、視野に入るものすべてに腹が立つ、といった精神的圧迫感なんです。以前、引っ越しをした時の話ですが、片付けを一段落させた後に「さて、一杯いくか」と思ったところ、冷蔵庫に何もないことに気づき、慌てて近所のコンビニに走ったものの酒を置いていないクサレ店であることが判明、鬼のような形相で周囲500メートル四方を駆けずり回り、その道中では、すれ違う際に肩がぶつかった人を殴りつけ(その時の人、スイマセンデシタ…)、角からいきなり無灯火で飛び出してきた自転車を突き倒し(本当にスイマセン…)、閉まっていた酒屋のシャッターを数度にわたり蹴り上げ(重ね重ねスイマセン…)、文字通りの一大騒動でした。そして、ようやく手にしたブツを食道に注入した時の快感ときたら…すいません、どうでもいい話でした(苦笑)。 |
4.ワイルダー、ハリウッド監督4作目。オスカー獲得、パチパチパチパチ。非常に真面目な作品で、笑いは排除されております。中毒者を扱うという点で、この時代には冒険だったようですね。さて、お酒を求めてさまようレイ・ミランド扮するドン、こいつがもうどうしようもないんですが、見ているうちに「ドン、我慢しろ!」という感情よりも、「ドン、後ろ後ろ!電灯、電灯!」と思わずドリフのコントを見る子どものような声を上げてしまいそうになります。ドンが飲むのを期待してどないすんねん、とすぐに気付くんですけどね。いやー、でも病院のシーンなど、かなり中毒者をリアルに描こうとするワイルダーの姿勢がよく見えますです。ハッピーエンドになっているのは、そうしないとパラマウントの幹部が映画化させてくれなかったようなので、甘いと思う方々、大目に見てあげてくださいね。 【彦馬】さん 7点(2004-05-20 00:59:35) |
3.音楽やそれに伴う雰囲気は結構緊迫してますが、内容はそんなに大した話じゃない。偉大なる小品という感じ。しかし中毒になる心理はかなり伝わった。やりたいことがあるのに自信がなくてできない。そういう自分が嫌いで嫌いで仕方なく、もううまいとも思えなくなった酒を飲んで一時の現実逃避。救いの手を求めているはずなのに、手を差し伸べてくれる真面目でしっかりした兄がコンプレックスの対象になってしまい、ひねくれてしまう。一途に愛してくれている女性も負担に感じて拒絶してしまう。そのジレンマに苦しむ様子がつらく、刺さった。同じことを自分もしていないか、と。 【ラーション】さん 7点(2004-03-21 22:35:07) |
《改行表示》2.《ネタバレ》 一番良かったのはヘレンが「私の恋敵はアルコールね」という洒落た台詞、なかなか言えませんよ。ワイルダーはこういうところが上手いんです。台詞に面白味が有るから、重いストーリーでも全く嫌になりません。 しかし、アルコール依存症って怖いですね。身内の献身的な思いやりもなかなか実を結びません。しかし、最後はヘレンの粘り勝ち。酒飲みドンは亡くなり作家としてのドンは息を吹き返した。 【おはようジングル】さん 7点(2004-02-08 17:55:18) (良:1票) |
1.ワイルダーにしては印象が薄い作品。まぁ、それでも、週末が「失われた」代わりに、アカデミー、カンヌの2冠を「獲得」。よかった、よかった。 【STYX21】さん 7点(2003-11-11 22:29:29) |