1.うん、やっぱりこれでやられたんだと思う、飯田蝶子の魅力に。
小津作品を通した他の役者という意味では東山千栄子の時もそうだった。「東京物語」でのの~んびりとしたおかあはん役を観た後に、黒澤監督作品「白痴」(1951) でのギスギスした年配女性役を観ると、この人ただもんではではないと思わされたもんだった。今回はそのときの感覚とどこか似ていて、ここまでのところ飯田蝶子といえば常に人のよい「かあやん」役だと思い込んでいたのが、本作のような脚本において正直者で根は悪くなんだろうけど、とにかくそこいらにいそうな品の悪い「おばはん」役をピシャッと演じられると、「一本とられた」的な気分になるのである。
でもやっぱり主役は…。
「青木放屁」といささか悪ふざけの過ぎる芸名の子。突貫小僧こと青木富夫の異父兄弟とのことで、かれらのおかんは今で言うステージママだったのだろうか、とにかく小津監督に拾い上げられて開花した才能。小津の「子役撮りコメディ万歳」な感じがあちこちにあふれている作品である。
ちなみに彼の父親役をちょい役で演じていたのが、小沢栄太郎であったということには即座に気づけず。相変わらずこの人も演じ分けが素晴らしい。最近の記憶では木下惠介作品「花咲く港」(1943)、「女」(1948)、そして溝口健二作品の「雨月物語」(1953) にて。これら観比べてもらえば納得してもらえるはず。