3.《ネタバレ》 最初と最後に流れるキャスト&スタッフのクレジット画面なんですが、あの文字のフォントは何であんなにコミカルなんだろう?
映画の顔ともいえるクレジット画面って、大抵はストーリーに合わせたものであることが多く、自分の場合なんかですと、そういったオープニングクレジットを見て、シリアスな雰囲気だなぁとか、コメディっぽいなぁとか想像して物語に入るわけなのですが、ストーリーを鑑みて後から振り返ってみるとあのフォントにはどうにも違和感ばかりが出てきてしまいます。
映画全体を通して見てみると、良い部分と悪い部分とが入り混じっている印象で、序盤でヒッチコックの「裏窓」のような舞台で物語が始まり、カメラが建物の中へ「サイコ」のように入っていく長回しショットなんかはとても面白く見れたと思います。
最後にもまた同様に窓の外からカメラが入っていき、アントニエッタが寝室に行く時に一瞬電灯を見る動作をカメラで捉えることで、彼女の気持ちが依然としてガブリエレに向いている様を描いたような微妙なテクニックなど、いろいろと画面作りに対する繊細さを感じ取れた気がします。
他にも、シーツを畳む時に二人が近づいた瞬間や部屋の中で抱き合うタイミングであえて喧騒を大きく聞かせ、事が済んで画面が切り替わるとパッと音が消えて時間の経過を暗示させたりといった音の使い方をしているところは自分の中では好きなシーンのひとつです(その時にシャツの逆の襟が出ているのも、わざとらしいけど面白い)。
その一方、向かい合って卵料理を食べ終えた後に隣の部屋に移動すると、三人の娘と思われる絵と一人の女性の絵が飾ってある所で会話が展開されており、画面右手前にアントニエッタ、左奥にガブリエレ、そしてガブリエレのすぐ右隣に女性の絵という構図が出てきたのですが、このように普通に家族がいる事を暗示させるショットが出てきたにもかかわらず、ストーリーの中ではそういったことが語られずに終わりを迎えてしまっているところからすると、伏線の回収不足か又は映像に意味を持たせることへの無頓着さも感じられてしまいます。
女性の気持ちを考えると、愛のあるセックスの後に国家のためのセックスなんて、本当に死ぬほどイヤだろうなぁと思いますが、照明をリズミカルに順々に消してベッドに入るアントニエッタの淡々とした姿には女性の強さが感じられました。