1.雪・桜・蛍とくれば、ディスカバージャパン的な定型の情景が連続するんではないかと心配していたが、そこは避けてある。雪はボタ雪と違い湿り気のないサラサラしたもので清潔。桜もそれらしい観賞用のカットはなく、自転車の車輪に貼りついた花びらがカラカラと宙を回転している。色も白・黒・赤という日本の伝統的な美意識に通じる三色の配置がしばしば使われるが、白い雪に黒い学生服、そこに赤い血や赤い傘が飛び込んでくるというような感じで、驚きのある新鮮な使用法。とても日本的な気分にあふれている物語を、情緒に流れないようにと監督は細心の注意を払って進めている。奈良岡朋子のエピソードなども、十分に溜めてから激情を爆発させるので、ジメジメしない。こういった演出上の抑制が、まわりの善意に溺れまいとしている少年の爽やかさと重なった。ただラストの蛍のシーンでの合成音は安っぽかった。赤い傘につけた鈴の音の効果などが素晴らしかっただけに残念。