2.《ネタバレ》 作家先生の周囲にいる人々のお話だが、なかでも特にロリータに共感できるか、できないか、観客のこの映画の印象はここで決まるのではないかと思った。ロリータのいじけっぷりは人によっては不快に感じるだろう。実際私も「この人痛い!」と思ったが…どこか自分に似ているから、こんなに痛く感じるんだろう。彼女の人物描写は、モテないうえに、唯一自分を認めてくれる存在であるはずの父親にすらぞんざいに扱われ、周囲の人間には偉大な父親に近づく手段として利用され…と三重苦以上の不幸を背負っている女のメンタリティーとしては非常にリアル。誰だってああなるわ。でも歌っているロリータはそれなりに美しく、その姿に私もはっとなり、セバスチャンと同様、ロリータに惚れ直した(しかも、そこもやっぱり見てない親父。芸術家というのはどこか自分本位で、側近の人を傷つけながら自己を高めるというイメージがあるが、まさにそのイメージのとおり。がっかり)。結末は、ロリータに感情移入しているぶん、何となく嬉しい。確かに大きく事態が好転するわけでもなく、ラストは静かなものだが、急変せずにじわじわと変化していく人間関係や、小さな言葉のすれ違いなど、物語が現実感を損なわず作られている点、私は好きだ。ただ、やはりちょっと地味で、あまり残らない作品かもしれないと思い、この点数。