2.《ネタバレ》 極めて詩的であり、映像も美しい。
人間誰しもが抱える心の闇を、デフォルメして描いたかのようであるが、都会の砂漠では案外、現実にあり得るかもしれない。
娘は親友の死を弔うために男達と寝る。
しかし、知らない男達と寝るという不純な行為とは裏腹に、その動機たるものには清らかさを感じた。
そこに現れたのは、父親の偏ったいびつな愛情。
父ひとり娘ひとりだと、こういった偏愛はリアリティを持つ。
父娘が二人で居る時は、二人共いたって穏やかでいて、優しい。
この穏やかさこそが、父娘の微妙な距離感を物語っているかのようだ。
つまり、父と娘は互いをさらけ出せていない。
それは相手を愛すればこそもの。
相手を傷つけまいとして、相手との距離があく。
この微妙な父娘の精神的距離感を、繊細な映像で描いてみせたキム・ギドク監督は、紛れもなく天才である。
美しい映像とそれに呼応した音楽で紡ぎ出されたショットの数々に酔いしれた。
叙情的な映像と、それを作り出す技術は素晴らしい。
脚本ありきのストーリー重視型映画でなく、私は本作のような総合芸術的作品がやっぱり好きだ。