2.《ネタバレ》 途中ものすごい駆け足という感じもあったが、よくぞ明治から大正、昭和と50余年の物語を映画にしたと思う。私自身学生の時見たこの映画をDVDで40余年ぶりに再鑑賞することができた。またに感慨ひとしおである。
この映画は明治・大正・昭和の親・子・孫三代の女性の歴史でもあるが、全編を通しての主人公は司葉子の花であろう。ハナでなく花であることがいかにも格調高いものを感じる。
花はまさに良妻賢母、夫に仕え夫を立て家を守る、そして古きものを大切にする。そうなると当然のごとく、娘は反発し新しきものを求める。この母と娘の対立は圧巻であり、岩下志麻の演技力が際だっている。孫娘はどうかというと、母親が家というものに固執しなかったおかげで、やさしい穏やかな娘へと成長する。
この映画の男たちは添え物でしかない。良妻に恵まれた敬策ですら、花の手の中で踊らされているようだ。敬策の急逝後生きる力を失ったかに見えた花であったが、孫娘華子の成長を見届けることが生き甲斐になる。ところでこの華子役、いくら新人を起用したとは言え、存在感が薄い。いうなれば作者有吉佐和子さん自身なのだから、もっと存在感を示してほしかった。逆に年老いてからの司葉子さんはすごい、特に孫娘を叱るシーン。そしてあれだけ家を守り古きものを大切にしていたのに、先祖伝来の宝を一切合切売り払ってしまう。
人間の歴史は変わっても、紀ノ川の流れは変わらない。それが大自然の営みを感じさせてくれる。人間がどう変わり、どれだけ進歩しても、大自然の中に存在するちっぽけな存在だということを。