1.スウェーデンの巨匠監督、イングマール・ベルイマンの遺作。
過去にベルイマン作品を25本観てきて、この遺作にようやく辿り着いた。
やっぱり遺作は、その監督の作品を沢山観てから観た方が、より理解も深まるし、感慨も深くなる。
本作はベルイマンの遺作に相応しい深い内容と出来栄えで、観た後は半ば放心状態になった。
人間同士の愛憎劇を、ここまで徹底的に描かれると、もうあっぱれと言うしかない。
元夫婦の30年の軌跡を辿り、男女とは何か、夫婦とは何かを観る者に問いかける。
そして、憎しみ合う父と子を描き、人間の憎悪の恐ろしさと醜さを容赦なく表現する。
更には、父子家庭における父親の娘に対する偏愛をも描き、どうにもしようのない悲劇を演出する。
これらの人間関係がてんこ盛りの2時間で、その密度は非常に高い。
ベルイマンは、『ファニーとアレクサンデル』で自身のキャリアの集大成としたはずなのに、高齢になってまだこんな力作を創り出す力が残っていたとは驚きだ。
ベルイマンの若かりし頃の作品のような、幻想性・創造性などの要素はさすがに感じられないが、老齢になり、人生経験を豊富に積んだ晩年にこそ生まれた奇跡の作品と言えよう。