16.大手銀行の経営崩壊危機、それに伴う日本経済の混乱、日々のニュースのトピックスでそういった言葉が乱れ飛んでいても、小さな一般市民にとっては、事の重大さの意味は理解出来ても、どこか別世界の出来事のように思えてしまうのが実情。
でも、それらを司る金融機関の職に就いている人々も、当然ながら小さな一般市民である。
この映画はその彼らを中央に据えて描き出す事によって、金融危機は常に社会の中心にあり、その影響は極めて身近なところに存在するということを訴えてくる。
経営崩壊危機からの脱却・再出発を図る大銀行の内情をつぶさに描き、一級のエンターテイメントに仕上げることに成功している。
実力派キャストを揃えた群像劇には、今作にも出演している仲代達矢、丹波哲郎らがメインキャストとして常に顔を揃えていた時代の日本映画にあった“熱量”を彷彿とさせるものがあった。
そこに役所広司の安定感や椎名桔平のギラギラ感等が加味され、「芝居」としての見応えが溢れていたと思う。
明らかに意図的だったと思うが、時に過剰なまでに仰々しい台詞回しや俳優の動きの付け方にも、見栄え的には極めて地味になってしまいがちな題材を「娯楽」として見せようとする「工夫」が感じられ、原田眞人監督の演出の冴えを感じた。この人は、こういう社会派ドラマを撮らせると本当に巧い。
断ち切れたかに見えた「呪縛」の闇の深さを漂わせるラストシーン。
すみやかに晴れ渡っているように見える空に、突如として不穏さを感じる。その空はそのまま現実社会に繋がっていることを暗示させ、恐ろしい。
P.S.椎名桔平の存在がいいスパイスとして効いていたと思う。ラストの“開き直り”は最高。
個人的には「アウトレイジ」の役柄と人間的な部分で通じるものを感じた。
もしかして彼は、あのまま身を落とし、「大友組」に拾われたんじゃないだろうな……。