2.《ネタバレ》 今まで秘密のベールに隠されてきた妖精たちの誕生の様子や仕事ぶりが堪能できる。夢のある話で、家族向けのそつのない仕上がりという印象だが、大人目線で見るとアラも目につく。鑑賞後わが意を得たと気はしない妖精と風景のデザインは、かろうじて合格ライン。それなりに可愛いし、それなりに精緻で美しいレベル。残念なのは妖精たちの動きがぎくしゃくしているところ。顔の表情も「豊か」とはいえなず、手抜き感がある。
内容面で、不満という程ではないが、いくつかの疑問がある。
まず「走りアザミ」の正体がわからないこと。植物なのか、妖精の類なのか、妖精がいたずらしているのか。まあ、これは大した問題ではない。妖精の国の話だから。この「走りアザミ」の暴走で被害がでて、メインランドに春を届けるには数ヶ月も遅れるということだが、さほど被害が甚大とは見えなかった。
それから他の妖精は”妖精らしく”魔法を駆使しているのに、もの作り妖精達だけは手作業中心なのも気になった。tinkerは「鋳掛屋」なのでそうしたのだろうけど。人間の国から流れてきた忘れ物を改造して妖精の道具を作るのだが、出来たものは人間の使う道具に似すぎている。もっと妖精にふさわしい、夢のあるものにしてほしかった。道具作りが進化すると、妖精の谷「ピクシー・ホロウ」でも「モダン・タイムズ」のような事態になりはしないか心配になった。そもそも妖精は自らの喜びのために自然や人間のためにいろんなことをするのであって、労働やノルマとは無縁と思われる。「赤ん坊が初めて笑ったときに妖精が生まれる」ということなので、子供達に奉仕するのが喜びなのだろうか。妖精社会が遊びと自由の楽園ではなく、緩やかとはいえ労働社会・管理社会であっては子供達の夢もしぼみがちではなかろうか。子供たちが観たい妖精の姿は、自由気ままに飛び回り、遊び、いたずらする姿と思う。自分達のあこがれの投影として、妖精を観る。子供達が自由で気ままなのだから、妖精はそれ以上のものであってほしい。考えてみれば生まれてすぐ労働というのも過酷ではないか。
才能を決める儀式でせっかく得た石斧を使わないのは惜しい気がした。キーアイテムにできたのに。
妖精が鷹に追われことに対して疑念がわく。雛のときに飛ぶ手伝いをしてあげなかったの?それとも天敵?まさか。実際の天敵は上記のような理屈をごたごたこねる大人でしょうけどね。