13.麻生久美子とふせえりが自転車に乗って並び走る。
ふせの一言一言に麻生のペースは落ちたり上がったりと、刻々変化する。
画面比として大きくなったり小さくなったりというその表象的リアクションを、
カメラは後退移動のロングテイクで延々と捉えている。
やがて画面右手には線路が見えてくるロケーションだ。
ならば間違い無くやってくれるだろうと思いつつ見ていると、
果たしてその長廻しの中盤とカット尻、狙いすましたかのように
通過する山手線の車両の緑を二度画面端に入れ込んでいる。
そのタイミングが絶妙だ。
線路を写したならそこにぬかりなく列車を走らせる、
映画の作り手としてのその律儀さ。そして色使いに対する拘りの徹底ぶりが嬉しい。
単に衣装や小物や美術での配色ならさほどの難度はないように見えるが、
本作で麻生が纏う衣装のバリエーションは半端ではない。
緑のダンプカーの配車も大掛かりだ。
その上でさらに、自転車のシーンのような手の込んだ芸当を
軽やかにやってのけるあたり、侮れない。
そうして拘り抜いた眼に優しい緑の配色が心地いい。
映画前半は、しゃがむ、病床で横たわる、沼に沈む、埋もれるというモチーフから
後半は快晴の中、飛翔する、上昇するというモチーフへ。
いろいろとよく考えてもいる。