12.《ネタバレ》 衝撃的で、確固たる命題に貫かれた前作に較べると、何とも野放図で、まとまりが無い。
大人の事情で主人公が変わってしまったのは許そう。
この映画の主題は核の恐怖だ。人類滅亡どころか、地球の全生命消滅に繋がる核の恐ろしさが伝わるかどうかが、成功の鍵を握る。結論として、衝撃的な最終場面はあるものの、核の恐怖はさほど伝わらない。理由はいくつかある。
第一に地底人の描き方の問題だ。テレパシー、幻影、幻聴、思念で人を操る等、余りに現実離れしている。たかが二千年先の人類なのに、変質しすぎている。テレパシーで苦しんだり、仲間同士で殺し合いをさせられる場面は、絵的に表現するのが難しく、小芝居しているようにしか見えない。従って、緊迫感が無い。又、高度な知能を持ちながら、猿に対して有効な対抗手段を持たないのも不自然。逃げも隠れもしないのも謎。核爆弾を“聖なる武器、平和の武器”と崇めるが、猿には核兵器の知識がなく、抑止力にはならないのは明白だ。核信仰の根拠が不明だ。
第二に、猿が武力で禁止地区を侵略する動機が希薄。食料を求めてとのことだが、猿村の周辺は自然が多く、食糧増産には困らないだろう。禁止地区こそ食糧がなさそうだ。発見した地底人をいきなり皆殺しにするのも無茶である。
次に、チンパンジーがプラカードを持って「自由と平和」を訴えるデモをするが、これは露骨に製作時の時局を取り入れたもので、製作意図が見え見えで、興ざめする。
細かいことだが、馬車を奪って逃走するブレントをすぐに猿が追跡するが、奪う場面は目撃されていないので不自然だ。地下鉄のレールは二千年経てば錆びて跡形も無いと思う。
最大の不満は、前作での疑問、「どうして猿が人間を支配する世界になったのか?」に対する明確な答えがないこと。答えがないまま地球を破壊してしまうのは暴挙に等しい。地底人の醜怪な顔の理由も明かされない。ブレントもテイラーも対して活躍しないのも不満だ。ノバは人形に過ぎない。誰もが物足りなさを感じるだろう。
核爆発を阻止しようとしたテイラーが、最終的に核のスイッチを押すのは辛辣だ。人間は感情で行動するので、偶発的に何をしでかすかわからない。核は、危険すぎる「守り神」である。