6.《ネタバレ》 大切なものすべてを失っていったトマの人生は悲惨に見える。
すべてをアルフレッドのせいにして憎悪を募らせていたが、エヴリーヌと幸せになるチャンスはあったのに。
冒頭の死体で主人公の殺人をサスペンスタッチで臭わせておいて、現在・過去・空想の間を行き来しながら予想外の展開へと運んでいく構成はなかなかお見事。
何の価値も見出せなかった人生が最後に意味のあるものへ、否定から肯定へと反転したラストは、明るい音楽とともに余韻が残る。
一度きりの人生、できればもっと早く気付けば良かったんだろうけど、後悔だけで終わらなかったのが救いか。
未熟で不器用で愚かな生き方をしていたトマが切なく、ちょっと愛おしい気持ちにさえなる。
身代わりで撃たれることが人生の肯定につながるのは、うまく騙されているような気がしないでもないが、不思議と気に留めてしまう作品。
自分自身の人生について振り返ってしまうからだろうか。
ブン♪