1.《ネタバレ》 トラップ・ファミリーのアメリカでの紆余曲折は、NHKのドキュメンタリーでも取りあげられていましたが、こうして映画(ドラマ)として見た方がわかりやすいし、親しみも持てます。観客に受け入れられるまでの試行錯誤が、面白く描かれています。「歌の力」を発揮するところは相変わらず。それにしても、最初は宗教曲ばかり歌っていたので成功しなかったとは聞いていましたが、パレストリーナやバッハのモテットまでレパートリーに入れていたとは恐れ入りました。そりゃあ受けませんわ。しかも、神父やマリアは宗教曲を広めるのを使命と考えているので、なぜ受け入れられないのかわからないのが、おかしいというか、実のところ歯がゆい。この辺は事実とはいえ、ドラマとしてうまい展開だと思います。私のように、アマチュアとはいえ音楽を演奏する立場にいる者としては、自分が聞かせたい音楽と聴衆が聞きたい音楽との乖離について改めて考える、良い機会ともなりました。西ドイツの映画であるためか、観光気分でニューヨークやアメリカ各地の景色を映す場面が冗長で、その点だけが残念でした。