5.フツーに考えてあり得ないオハナシ・・・? いえいえ、そんなことありません。誰にでも経験はあるはず。あれほど恋焦がれた相手に「こんなはずじゃなかった」と落胆したことが。恋をするとき、人は相手のことを自分の価値観という動かしがたいフィルターを通して見る、いえ、見ざるを得ないのですから。そして現実を知って叩きのめされる。この映画は、そんなどこにでも転がっている恋愛での現象がものすご~く極端な形で出現してしまった例のお話だと言えましょう。始まってすぐに「あ~、勘違い」の恋なら誰にだってあるけれど、始まって10年も経って勘違いに気づかないならそれはもう本人たちにとっては「真実」に・・・。そもそも、ガリマールは蝶々夫人の舞台日本と、自分のいる中国もごっちゃになっている様子。いずれにしても、恋愛は多少の勘違いを真実と信じる妄想力や幻影を見る想像力がない人間には出来ません。でもでも! 映画としては好みが分かれるでしょうね、これは。キワモノに成り下がることなく、ぎりぎりのところで作品性を保っているのは主演2人の俳優に負うところ大でしょう。ジョン・ローンの女装はなかなかのものでした(声の野太さは如何ともしがたいけど)。こういう「色事」で身を滅ぼす男を演じさせるにはやっぱりジェレミー・アイアンズ。護送車の中でのシーンは切な過ぎ、あのラストシーンはあらゆる意味でイタ過ぎます。