3.「感情移入」なんてものを受け付けないスクリューボール(=常軌を逸した変人)的主人公を演じる浜野謙太の風貌とズレた台詞がいい。
一般性と特殊性が綯い交ぜとなったユニークなキャラクター造形だ。
拘置室の「壁」を挟んだ男女間の闘争は、スクリューボールコメディ(SC)第一号『或る夜の出来事』の「エリコの壁」の変奏とも云えよう。
それも最終的には恋愛の成就(女性の勝利)に帰着する点や、具体的恋愛表現をほとんど短いキスだけに留めている自主検閲的側面なども伝統的SCの王道を踏襲している。
四人が囲む会食シーンや、浜野のアパートでの取っ組み合いシーンを始めとする然るべき長廻しは、場の空気の変容を捉えるための然るべき個所で的確な構図とともに用いられており、巧みだ。
どこかアドリブ感も感じさせる吉高由里子の豊かな芝居も楽しい。
忍び込んだ浜野のアパートで大慌てする様などは最高だ。