2.《ネタバレ》 「サメ映画」というジャンルは、非常に当たり外れが大きいです。
もしかしたら当たりよりも外れの方が多いのでは……と考えてしまう事も屡々。
それだけに、本作のような掘り出し物に出会えた時は、その喜びも一入ですね。
無数のサメが竜巻によって空に舞い上げられ、それが浸水状態の市街地に降り注いでくる。
そのアイディアだけでも拍手喝采なのですが、本作が面白い要因としては、きちんとパニック映画としての基本を押さえた筋運びになっている事が大きいのだと思います。
「アイディアと勢いさえあれば、面白い映画は撮れる!」という考えも間違いではないでしょうけれど、やはり基本は大事。
まず、この作品においては「誰が死ぬのか分からない」というドキドキ感の煽り方が、とても巧みなのですよね。
冒頭にて、主要人物っぽく登場した船上の二人が、すぐに殺されてしまう辺りは少々やり過ぎ感もありましたが、それが結果的に上手く作用しており、後に登場する人物達の生存予測を、適度に困難にしてくれています。
そして、もう一つ大事なのが「観客が納得するような人物を生き残らせる」という点。
上述の「誰が死ぬのか分からない」展開と相反してしまう、この条件。
生き残りそうな人物でも死ぬからこそ油断ならない面白さに繋がる一方で、やはり観賞後の爽快感を考えると、生き残って欲しいと思わされた人物が死んでしまうのは、納得出来ないものがありますからね。
大抵のサメ映画は、この矛盾を解消する為に四苦八苦している印象がありますが、本作においては、そのバランス感覚が絶妙。
ラストには反則的な「実は生きていた」展開も駆使して、観客の後味を良くしてくれるのだから、嬉しい限りです。
サメが泳いでいる「道路」の上を、車で走って避難するという絵面だけでも面白いし、血生臭いシーンは控えめになっている辺りも好み。
主人公のフィンは「困っている人を放っておけない」という、典型的なタイプではあるのですが、決してテンプレをなぞるだけで終わっていない点も、良かったと思います。
その性格ゆえに
「私達家族よりも、他人の方が大事なの?」
と妻に責められて、家族関係が不和となっている設定など、きちんと個性が確立されているのですよね。
他人よりも家族を優先して守ろうとする事だって、決して間違いではない。
それでも主人公は、孤立したスクールバスを見かければ、避難する足を止めて、子供達を助け出そうとする。
あまりの「良い奴」っぷりに、惚れ惚れさせられます。
中盤から終盤にかけて、やや間延びしてしまった印象があるのは残念でしたが、その代わりのように「チェーンソーを携えてサメの口の中に飛び込む主人公」なんていう、トンデモないクライマックスを用意してくれているのだから、もう大満足。
愛すべき映画でありました。