7.《ネタバレ》 モノクロだったが全然気にならなかった。それだけストーリーにマッチしていたのだろう。
誰もが思い当たるような親との思い出。モノクロが郷愁をそそるのかもしれない。とても地味だけど、静かにグッとくる映画。
同監督作品の「サイドウェイ」もそうだがストーリーに派手さはないけれど人間描写が実に巧みで、その裏にどこかウィットや温かさのようなものを感じる。
誰が見ても詐欺だとわかる100万ドルの当選通知。それを信じてはるばるネブラスカに向かう父。
認知症の気もある父は家族の説得にも耳を貸さない。この辺りの頑固さと話の通じなさへのイライラは、息子にすごく共感できる。
一緒にネブラスカに向かう間に、今まで知らなかった父の一面を少しずつ知っていく。
子供は親にも青春時代があったことをつい忘れがちだし、あえて知ろうとしなければ知ることもない。
父が100万ドルに執着した本当の理由は、新車のトラックが欲しかっただけではなく、息子たちに何かを残してやりたかったから。
そのことを知った息子は、父の本当の姿をまた一つ見つけたよう。二人の心の距離がグッと近くなったのが伝わってくる。
そんな父が馬鹿にされるのが我慢できず、エドを殴りつけてしまう息子。
理性的なデヴィットらしくない行為だけれど、これは殴らずにはいられないと自然と感情移入。
大金を当てたと信じこんだ人達が次々とタカってくる様子がとてもリアル。
家族間のやりとりも絶妙で、兄や母もキャラが立っている。
特に文句ばっかり言ってる母の姿は、思わず苦笑させられるほど。
ラストも巧い。デヴィットが購入してあげたトラックを誇らしげに運転する父と、それを呆然と見送る顔を腫らしたエドの姿が面白い。
エドの表情は、本当に100万ドルを当てたのかと信じられないものを見たようだった。
父をホラ吹きのボケ老人にさせなかったデヴィットの素敵なプレゼントに心温まる思い。