3.《ネタバレ》 ロバート・ワイズ、というと「ウエスト・サイド物語('61)」、「サウンド・オブ・ミュージック('65)」「砲艦サンパウロ('66)」といった大作作家の印象が強いけど個人的には50年代までの作品群、それこそ「罠('49)」「傷だらけの栄光(’56)」、そして「地球の静止する日('51)」みたいな小品が好きだ。「黒人を主演にしたフィルム・ノワールの傑作」として紹介されてるこの映画を鑑賞したきっかけはロバート・ライアン好き+音楽(MJQにビル・エヴァンス+ジム・ホール)。3人の男が銀行強盗を実行、その破滅を描いた話なのだが顛末は「自滅」なので、サスペンスとしては他のレビュアー様と同様「最初からやめときゃ良かったやん!」という感想しか出てこない。但最近DVDで再見する機会が有ってこの作品、企画=主演ベラフォンテ+監督ワイズによる、好景気に沸くアメリカの暗部を描き出した社会派作品として感じるところがあったのでこの点数。黒人差別の件はすぐわかったが、今回見直してみて新たな発見だったのは前科者で極端な人種差別主義者であるアール(ライアン安定の好演)、彼は戦争体験によるPTSDを病んでしまっていたのでは?という点。(軍部が鎮痛剤/精神安定剤として供給したモルヒネの影響で、薬物中毒とPTSDに苦しむ帰還兵が社会に復帰できない=犯罪等の増加の一因となるほどの社会問題になってたのは有名な話)犯罪決行の前、時間つぶしで狩りに行くもウサギを打つことが出来ない→ラスト銃撃戦からのタンク大爆発も銃の流れ弾が、というよりも精神不安定でもたらした帰結なんだろうな、と。50年代後半、映画界におけるヘイズ・コードが未だ効いている中、ベラフォンテ+脚本エイブラハム・ポロンスキー(映画公開当初はノンクレジット=後年名誉回復)は赤狩りのブラックリストに乗った人物。そういったポイントを踏まえて機会があればぜひ鑑賞下さい。あともう一点。音楽に参加したビル・エヴァンス(p)とジム・ホール(g)は後年大傑作アルバム「Undercurrent('62)」で共演し、この映画で使われた「Skating In Central Park」をプレイしてます。これが本当に、いいんだなぁ~。