2.《ネタバレ》 上映時間は86分、主人公の男がハイウェイをドライブする86分をひたすらとらえ続ける。
上映時間=作中の時間、この設定は今となってはさほど目新しさはないのですが、
彼は全く動かない。作品の全ての時間は、様々な相手と電話で話しながらハンドルを握りハイウェイを運転する彼の姿をとらえ続けるのみ。
彼が電話で絡む様々な声の主以外、キャストはハイウェイをドライブする男を演じるトム・ハーディ1人のみ。
運転席に座ったままのトム・ハーディの1人芝居を86分間ひたすら見続けることになるワン・シチュエーション映画。
彼の奥さん、息子、出産を間近に控えたある女性、仕事仲間、仕事で緊急に連絡を取らなければならない警察や役所の人間たち。
彼らとの間に現在進行形で起こっている問題に対し次々に電話で対応しなければならない。電話の向こうの声の主の事情や対応も様々でよく練られている。
この夜に起こった問題の全ては彼の自業自得ですが、それら全てを投げ出さずに向きあおうとする。
今夜の彼の行動のことの発端から適当に逃げていれば、今夜も何事もなく家に帰り夕食をとりながら家族とサッカーを観戦し朝になれば仕事現場に向かい、
何も失わずに済んだのかもしれないが、彼はそうはしなかった。そのために彼は仕事も家庭も失うことになるのだろう。
この夜の様々な問題に対し、たった1人の運転席に座ったままの登場人物と電話、これだけで見事に最後まで緊張感を持続し続けた。
極端に動きが制約された中でのトム・ハーディの1人芝居もまた素晴らしかった。