2.《ネタバレ》 山本富士子を三女雪子にキャスティングした時点で、谷崎原作とは似て非なるものをこしらえようとした製作陣の野心は誉められていい。確か原作では、縁談の相手からのお誘いの電話を長時間ほったらかしにして、良縁を逃す愚挙をしでかしていた極端に内向的な雪子。冒頭で川の対岸でフラフープしてる姪っ子に、大声を張り上げる溌剌とした山本富士子=雪子を観ながら、ああ、これはもう原作の人物造形とは異なる形の映画なんだなあと、納得。しかし時代背景を戦後に移した事以外の粗筋は、この作品が「細雪」三作の中でも一番忠実。風水害の描写もなかなかのド迫力。作品の評価としては83年度市川監督版には劣るが、これはこれで大映印のメロドラマとしてなかなかの出来だと思う。「帯がきゅうきゅうと鳴る」シーン(好き!)、どの「細雪」でもちゃんと出てくるのが面白かった。当時の大映看板女優揃い踏みだが、若尾文子だけが欠席なのは淋しい。