2.《ネタバレ》 この時代について詳しいわけではないので、はっきり言って誰が誰だか完全には分からなかった。
また、本作に描かれた内容が事実に即しているのか、中立なものかを判断する尺度も持ち合わせていないので、そういった観点からも批評はできない。
決して面白い映画ではないと思うが、映画自体のレベルは非常に高いと感じられた。
確かに、焦点はボヤけているとは思う。
本作では「ニクソンはこういう人物である」とはっきりとは描かれていない。
「ニクソンは最低の大統領だ」と一義的に決め付けて、その方向に向けて製作することは簡単かもしれないが、あえてオリバー・ストーンは方向性を決め付けずに多角的な視点からニクソンを描き出そうとしていると感じられた。
父親、母親、兄弟との関係、妻や娘との関係、部下や支持者との関係、戦争を反対している若者との関係、他国の指導者との関係など余すところなく描かれている。
ニクソンという人物が薄っぺらく描かれているのではなく、かなり深みが増して描かれている。
そのため、本作を見たそれぞれが、それぞれの思いでニクソンをジャッジできるのではないか。
賛否両論のある者を描く際にはもっとも適したアプローチをオリバー・ストーンは行ったと思う。
Wikipediaを読んだ方がよほどマシと思える映画ではなく、やはり彼の手腕は本物だと感じられた。
ニクソンについてよく知らないので、あまり書くべきではないが、本作を見た印象としては、「白を黒と言い張り、黒に変えてしまうほどのパワーのある政治家」のような気がした。
まさに政治家らしい政治家といえるかもしれない。
政治家として黒と主張すること自体は悪くはないが、貧困な家庭環境等の影響のためか、根底となる“魂”が歪んでいたような気がする。
彼の外交政策は評価するところが多いにも関わらず、彼が嫌われた理由としてはその辺りにありそうだ。