2.《ネタバレ》 飛行機にて鑑賞。この作品がアメリカ国内でヒットしたことを事前に知っていて、なぜこんなアジア人しか出てこない映画が受け入れられたのか不思議に思っていたのだが、その答えは絶妙なバランス感覚にあるのだと思った。
アメリカに住んでいてしばしば思うのは、ここには「アメリカらしさ」「アメリカ人らしさ」を確認し、浸透させる装置が遍く用意されているということ。たとえばスポーツを見て機会均等と平等の価値を学び、ミュージカルを見て革新と自由の価値を学ぶ。常に移民を受け入れ続けるアメリカでは、異なる出自の人々が共存していくために、「アメリカ」という価値観を常に再確認し内面化することが必要なのだと感じる。
そのことはまた、常にハリウッド映画で描かれ、またハリウッド映画の目的でもあると思うのだが、一方でこの映画が特別なのは、そうはいってもアメリカ人が出自の異なる人々の文化に興味があるということを微妙なバランスで描いていることだからだと思う。普段はアメリカ人として生きている人々が、それでも根強く抱えている独自の文化。「アメリカ」という価値観を共有しつつも、その裏で人々が持つ独自の文化に対して、実はアメリカ人が強く興味を覚えているのだということ感じさせられた。たとえばニックの母親がレイチェルに言う「アメリカ人のあなたは情熱のために生きるのかもしれないが、私たちはもっと長く続くもののために生きている」という言葉は、「アメリカ」という価値観からすればなんじゃそりゃ、なのかもしれないが、一方でとっても興味深い価値観なのだと思う。その興味を、コメディーとドタバタの中にさりげなく織り込んでいる絶妙なバランスこそ、この映画の肝なのではないかと思った。
ただし、もちろん最終的にレイチェルもニックも、やっぱり「アメリカ」という価値観を選んだことには、そうはいってもこの映画がハリウッド映画であることを感じさせたし、もちろんそれがこの映画のアメリカ国内でのヒットの一因であることもまたしかり。ほぼアジア人しか出てこない映画ではあるが、やはりこれは生粋のハリウッド映画なのだった。