2.《ネタバレ》 所謂「8050問題」に通ずるテーマを描いた作品ですね。もっとも、本作に登場する「忠さん」こと山田忠男は、日々作業所にも通所していますし、結果的には上手くいかなかったもののグループホームでの生活にも適応出来ました。そういう意味では「8050問題」の有する深刻さより一歩引いた状況と言っても良いのかも知れません。
とは言え、珠子にしてみれば近付きつつある「老い」の問題は決して自分だけのことではなく、謂わば運命共同体である忠男の将来に直結するもの。その不安は十分に察することの出来るものです。
隣家に移り住んできた里村家。この一家にも問題がない訳ではありません。夫婦関係は将来に不安を感じさせるものですし、真っ直ぐに成長しつつあると思われる一人息子の将来は、両親の関係性によって容易に影響を受けてしまうでしょう。
要は、どんな家族にでもその家族に固有の問題が少なからずあり、山田家の状況は決して特別なものではないということかなと思うのです。
タイトル「梅切らぬバカ」は、言うまでもなく諺「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」の引用ですね。山田家の梅の木は忠男にとって亡父が残した大切な木。だから剪定して欲しくない。でも、本当は適切に剪定することが梅を梅らしく育てるためには必要。では、忠男は梅の木のような存在なのか?それとも桜の木のように剪定することなく自由に伸ばして行くべき存在なのか。作品は結論は示していません。それぞれに考えて欲しいということなのでしょうね。