1.《ネタバレ》 まず冒頭の前作のあらすじ動画が素晴らしい。簡潔だけれどアート的でもあって、でも前作の流れはクリアによみがえる。で、本編。対立構図が単純だった前作と比べると、政治劇の要素も濃くなり、そこでデンゼル・ワシントンが素晴らしいくせ者っぷりを発揮しています。あまり明確には語られないけれど、おそらく元奴隷でそこから権謀術数を駆使して這い上がってきた男。ただ権力が欲しいというよりは、「この世界のありよう」に対する復讐や破壊衝動みたいなもののほうを強く感じる。彼の行動の数々は、ローマ帝国を「終わらせる」ことを目的としてきたと考えると、いろいろ腑に落ちる。一方で、主人公ルシアス=ハンノは、それでもこの世界に可能性を見出したい人で、その対比が見事なラストでした。ただ、ルシアスは勝利したとはいえ、ここから帝国の「再興」はほぼ不可能でしょう。もう腐るところまで腐ってしまった指導者たち、倫理よりも刺激を求める大衆、そこでハンス・ジマーをバックに「夢」を語ったところで、どこか空しく響いてしまう。熱血歴史劇っぽいのに、ラストの寒々しい感触は、リドリー・スコット御大の真骨頂だったと思います。
ただ、前作と今作の大きな違いは、この間に『ゲーム・オブ・スローンズ』という文字通りの「ゲーム・チェンジャー」が存在してしまっていること。ドロドロ政治劇も、絡み合う復讐心も、痛そうな剣闘(これはむしろ元祖は前作だが)も、憎たらしいサイコな若い皇帝も、どうしても既視感が先に来てしまう。コロッセオでの船上戦(文字列だけだと何言ってるかわからない)とか、びっくり映像はあるけれど、2作目でありかつGOT以降ということで、新鮮な驚きは少ないままでした。あと、ハンノがルシアスであろうことは観客もみんな知ってる(公式もそう言ってる)のに、物語中ではそこは「謎」っぽく扱われて、何をどこまで誰が知っているのかがはっきりしないまま、物語が進んでいくのがなんだか居心地が悪い。だいたいルシアスがマキシマスの子であることは前作では匂わせていたけど明言してたっけとか、マキシマスは妻と実子のいる天国へみたいなラストだったのに、天国でマキシマスも複雑な心境なんじゃないかと余計なことまで考えてしまった。