8.《ネタバレ》 帰還を許されない兵士達が、最前線に留まりながら、空間と時間を滑走する物語。
彼らは、最小限の身振りで音もなく、時には踊りながら、異物(平穏な街にとっての兵士)を華麗に排除していく。それは殺人というより、掃除に近い感覚さえ抱かせる。
暴走する物語のスピードに振り落とされまいとするように、彼らは空間と時間を飛び越えて、ただ戦場を駆け抜ける。
彼らには安息の地も安らげる時間も、帰るべき場所も用意されてはいない。宴のカットが変われば、直ぐに次の戦場(最前線)に放り込まれてしまうのだから。
激動の戦争が終わり、敵兵を背負った老兵の顔には、それでもなお叙情性や徒労感の影はみられない。