3.《ネタバレ》 人それぞれには意地とプライドというものがある。
それに強いこだわり持つ人にとっては、曖昧な結論など受容できるはずもない。
夫にケガを負わされた妻は、最初は夫のために抗議活動をしていたとはいえ、いつの間にか自分自身のこだわりとしての活動にエスカレートしていった。
本作は、役人の権力に対して人民がどれだけ対抗し得るか、それを一つのテーマにしている。
民主主義ではなく社会主義としての中国内において、どれだけ人民ひとりひとりの権利が尊重されるのか。
そして、それは尊重されるべきものであるとして、監督のチャン・イーモウは、観る者に訴えたかったに違いない。
人間というものは一度感情的になってしまうと、敵も味方もなく言動を起こしてしまいがちであり、本来仲間である村長や村人たちを巻き込んでいってしまう。
そんな暴走ぶりと、終盤の難産騒ぎで村長がこの妻の為に職務を全うするという下りが、見事に平行して描かれており、実に人情味のある豊かで緻密な作品に仕上がっている。
組織や集団における仲間意識の重要性。
だが、それはちょっとしたことから亀裂が生じ、行き違いが生じてしまう。
そんな人間の絆の重要性と脆さ、そして逆に結束力の強さをも提示してみせた本作は、チャン・イーモウの実力と魅力が存分に発揮されている作品だった。