4.前作「そして人生はつづく」と同じく作品のベースには90年にイランを襲った大地震があり、
本作でもやはり登場人物の多くは現地の人々が演じており、現実世界とドラマの世界の境界線を行き来する。
本作はキアロスタミ流ラブコメとでも言うべきか。
主人公の若者ホセインは同じ村の娘であるタヘレに恋をしているが全く受け入れられない。
本作の中で進行する映画撮影。この2人が夫婦の役を演じるのですが、
この2人の関係においても本作のドラマの世界と、その中にある撮影中の映画のドラマの世界の境界線を行き来する。
2人が噛み合うことは全く無く、同じシーンが何度も何度も撮り直しを余儀なくされ、じれったい展開が続く。
ホセインはタヘレに延々プロポーズの言葉を繰り返すが、タヘレは全く反応しないまま、ついにラストに・・・。
オリーブの林を抜け、草原を行く2人はもう白い点にしか見えない。
やがて白い点がこちらに戻って来る。その白い点が躍動している。
前作と同じくロングショットで撮られたラストシーンが見事でした。