6.「エルム街の悪夢」の画期的な(のかもしれない)点とは、夢の中の殺人鬼、という設定により、超現実的なオカルトの「ワケのわからなさ」と、殺人鬼モノの素朴な「ワカリやすさ」とをうまくブレンドした点にあったのではないか、と。その点、この『ファンタズム』ではまだそういう融合は無く、あくまでオカルト路線そのものですが、夢で摩訶不思議を演出してみせるシーンには「エルム街」の先駆けのようなものも感じます。
何せオカルト、オハナシはちっとも要領を得ません。まあ、ホラー系の映画に出てくる「悪」なんてのは、「悪」そのものであって、そこには目的も何も無いのが普通、ではあるのでしょうが、この『ファンタズム』では、変な髪型のオッサンが出てきて、これが「悪」の存在らしいのだけど、何を狙っているのか、最後どうなればいいのか、まったく不明。凶暴な殺人鬼ならともかく、何しろただのオッサンなもんで。
といういかにもファジーな設定の中で、様々な得体の知れない事が起こり、こういうワケのわからなさ、何が起こるかワカラン感が、良いんですねえ。
あの謎の金属球。なんでこんなモノにこんな殺され方をしなければいけないのか。ワケはわからんけど、恐怖と残酷趣味とユーモアが一体になっていて。宙を飛ぶ凶器を側面から静止画で捉え、背景の映像を高速で流して見せる、なんてのは、よく見る演出ではありますが、もしかしてそのハシリなのかも。