2.鏡花の芸道ものの翻案だ、と言われれば、ああそうですかぁ、と納得しちゃうような話。師も弟子も、妻なり愛人なりの死によって、道を究めていく。師は求道家というより、妻を死なせた運命なり社会なりに対してスネているようなところがあり、芸術とは天上のものでありながら、この世のものごとに左右されるものでもあるんだなあ。そこらへんの芸術論の映画と見た。芸術はこの世に生きるためのもので、鎮魂の音楽でさえ耳にするのは生き残ったものたち、しかし芸術は芸術として純粋に閉じていきたがる表面張力のようなものも持っている。音楽は何のためにあるのか、と問われたマレは、すべての見えざるもののため? と答え、師はノンと言う。芸術のうち最も純度の高い音楽を巡って交される芸術論だ。好みとしてはもっとぶっきらぼうな演出のほうが良かったのでは。弟子マレが自作を弾いたとき、師が眉をピクリとさせるような、ああいうのはちょっと違うと思う。ドパルデューも薄化粧の有無に関わらずなんか違うなあ。