5.もちろんこの映画には主人公がいるけれど、他の登場人物の描写もポイントが押さえられていて、群像劇としても観れる。一体、個々にみると暖かいものをもった人間同士が、なぜに争わねばならないのか。この映画はそんな悲しい問いかけをしている。この監督は何気ない緊張感を描くことに長けていて、瀕死の主人公を巡る人々の姿がとても緊迫した美しさの中で捉えられている。タイトルからサスペンスと想像できるが、僕はあくまでドラマとしてみたほうがこの映画に合っていると感じた。第3の男に比べて印象が薄い感はあるものの、切ないラストなどの味わいは捨て難い。 【wunderlich】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2005-05-03 12:09:56) (良:2票) |
4.《ネタバレ》 なかなか重厚な作りで良かったです。それから衛星放送で観た後すぐにレビューを書いておけば良かったと思えるほど、皆様と内容が被ってしまうのですがこれ以上被らない内にとっとと書いておきます(笑)。そんな訳で皆様の仰られる通り本作は「第三の男」同様、影に拘った演出とモノクロームの映像が実によく物語にマッチしています。結局は全部あの間抜けな主人公が悪いんだけど、様々な人に助けられ(いじくられ)ながら半死半生で生き延びていく姿は面白かったです。また他の仲間も警官に射殺されたり捕らえられたりしながらも、最後まであらん限りの抵抗をするシーンはスリリングで尚且つ哀愁を誘いました。余談ですが、鳥好きのシェルという男は見ていて個人的に「ロード・オブ・ザ・リング」のゴラムを思い出しました。 【かんたーた】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-09-19 23:46:09) (良:1票) |
3.皆様がおっしゃるように『第三の男』に通ずるモノクロの画面における光と闇のコントラストが絶品。キャロル・リードというよりも『第三の男』でも組んだカメラマン、ロバート・クラスカーの技ということでしょうか。ノワール的な色合いを見せながらも、描かれるのは犯罪でも逃亡でもなく、そこに関わる様々な人々の様々な思惑。ベルファストという特異な地域ゆえの逃亡者との関わりが丁寧に描かれてゆきます。人を計画外に殺めてしまうくだりの描写にチープ感を拭えませんが、その後の人物描写の巧みさを堪能できればあまり気になりません。追跡者、協力者、密告者、英雄視する民、仲間、裏切り者、神に委ねる者、賞金を狙う者、芸術のモデルにしようとする者、それぞれの思いが交錯するドラマを最後には愛に殉じる女が締めくくる。脚本もうまいってことです。 【R&A】さん [DVD(字幕)] 7点(2005-08-17 12:20:33) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 なんでも英国映画で初めてIRAの活動が描かれた作品なんだそうです。冒頭に「この映画は組織の活動を描いたものではない」という曖昧なテロップが出るところを見ると、まだ遠慮というか配慮があるみたいですね。舞台が北アイルランドのベルファストなのでIRA活動家と敵対しているプロテスタントの住民たちも多く強盗に失敗したジョニーは逃げ回ることになるわけですが、『第三の男』の原型とも言える陰影が深いモノクロ映像は一見の価値ありです。ラストのジェームズ・メイスンとフェイ・コンプトンの死の場面は、まるで浄瑠璃の心中物でおなじみの“道行き”の様で、英国製フィルム・ノワール史屈指の名シーンです。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-01-27 00:34:24) |
1.安易に通報出来ない市民と恋は盲目状態の彼女が醸し出す緊迫感を単に役立たずでヨタヨタしているのみの主役がかき消しています。虚無感漂う良質な映像や音楽に生煮えなストーリーが応えていない所が非常に残念です。 2018.10.15再見 ジェームズ・メイソンに対して大それた物言いをしていた自分に驚きます。言い方は改めるとしても感じた事は前回同様でした。ただ、ジョニーのする事をも含めて一途に愛したキャスリーン最期のシーンの切なさ極まる演出にプラス1点。 |