5.《ネタバレ》 “メタボ”佐分利信。
星野仙一バリ、田中角栄バリのカミナリ親父ぶりを十二分に発揮。
最初は悪役に回り、最後は従順な一面を見せて、父親としての理解を示す。
まあ、小津作品を見慣れた人ならすぐに予想できる内容です。
しかしながら、内容が読めるとか読めないとか、そんなことは小津作品を観るに当たっては、さして重要なことではありません。
小津ならではの様式美に支えられた画面の中で、ゆっくりと進行する人情劇に気持ち良く身を委ねれば良いのです。
それにしても、会話のシーンがとても個性的というか、ぎこちないというか。
もちろん、小津監督は狙って演出しているのですが、これは何度観ても、なかなか慣れることができません。
というか、いつから小津監督の撮る作品は、こんな感じになったのでしょうか。
完成された小津様式といったところなんでしょうが、画面がセリフごとに忙しなく入れ替わる、あの撮り方は一体、どんな意図があるんでしょうか。
まあ、それはそれとして、小津監督の後期カラー作品は、色鮮やかでとにかく綺麗です。
あんなカラー映像を撮れる監督は、世界広しと言えど、小津監督しかいないでしょう。
本作は、遺作である『秋刀魚の味』と似たテイストの作品ですが、個人的には、テンポ良く、小気味良く進んでいく『秋刀魚の味』の方が好きですね。
本作はさすがにゆったり過ぎたような気もします。
でも久我美子を、あんなチョイ役に使うだなんて、なんて贅沢な作品なんでしょう・・・