1.登場するすべての男女に愛の線を引くことが出来る。しかもみな自分の愛のみを基準に行動するから、秩序から渾沌へと導かれていく。スペインである。ファーストシーン、なんだろうこれ、教会の釣鐘のタマかなあ、ひびが入ってるなあ、などと思ってたら、牛のタマであった。これは後に巨大なパンツのたて看板と対になって(この監督の次回作は『ゴールデン・ボール』って嘘みたい)。最初は肝っ玉母さんと溺愛ママの対比で、なんか「もう分かった」って話かと思っていたら、だんだんヘンになってくる。情熱の国。S・サンドレッリの、自分の仕掛けに溺れていってしまうあたりが分かりやすい軸となって、あとはみなヘン。A・ガリエナは女の家の親分。娘三人に娼婦たちも雇って、轢かれたペットの豚を丸焼きにして食べちゃうたくましさ。情熱の国だが、乾ききっている。ハムで戦う男。ゆっくりとやってくる羊の群れ。リアリズムに撤するとかえってヘンテコリンになっていく風土なの。