3.《ネタバレ》 ヴェルヌイユはギャバンとドロンでサスペンスの傑作を撮っていますが、同じ2大俳優の競演でもこちらはこちらでまた良い作品です。
さて、男ってのは過去に生きるもの。
また自分の経験上、親子ほど歳が離れていると人間関係は大抵は合わないことが多い。仕事でも飲みの席でも。約30年の価値観の違いが互いを理解できずにそうなってしまうのだろうと思う。
1962年の公開当時は人気が出たかもしれませんが、令和の今の時代では若い人にはそっぽを向けられてしまうだろうという気もしますので、この映画は一種のお伽噺のような感覚で観るのがいいと思います。
自分がこの映画で印象に残ったのは、禁酒を続けて以来訪ねていなかった丘の上の酒場にベルモンドを連れて行ったシーン。
ルビッチの映画でもありましたが、相手を深く知って心を開き長年封印していた〇〇を開封するとか、何十年ぶりに火を入れるとか、アナログで映画的で良いんです。
オープニングで女主人が坂を登るショットとカメラアングルや構図まで同じなのはヴェルヌイユの意図したところに違いありません。
ギャバンは中国に、ベルモンドはスペインに思いを馳せ、互いに共感を抱く。
ここで約束が破られてしまったもののずっと禁酒の約束を守り続けていた律儀なところや酒を飲み交わす描写は、“男ってのはな・・・”をよく表していたと思います。
ラストは、ベルモンドの方は子供と一緒に新たな生活を築き人生のリスタートを果たすのでしょうが、ギャバンは火が消えた花火のよう。
これも人生、というヴェルヌイユの人生観として捉えさせていただきました。