1.《ネタバレ》 「でんきくらげ」にひきつづき、渥美マリや川津祐介、玉川良一が出演している。渥美マリは前にも増して一本調子の演技になり、川津祐介もその一本調子に合わせて同じようなことをやる。これが奇妙なアンサンブルというか、この映画のちょっとした個性になっているように見える。だからやはり前作のようにストーリーに膨らみを持たせるようなことはやっていない、直線的な演出なのだけれども、それが悪いというわけでもない。こちらでは、玉川良一のかなり強烈な個性の「ダメおやじ」が、準主役級の活躍で、彼が登場人物すべての運命をひっかき廻し、当人は平然としてまたとんでもないことをやらかしていく。素晴らしい。
ヒロインの渥美マリのまわりに集まる男たちは、皆彼女を利用してそれを金銭に換算しようとする。彼女はダメダメな父も愛したいし、心から愛せる男を求めてもいる。それでも物語の終りに父は金欲を絶って更生できるかどうかはわからないし、ヤクザから足を洗って欲しいと願う男もやはりどうなるかわからない。ラストにビル街を無表情に歩き抜けていくヒロインに希望があるのか、絶望しているのか、その表情からは読み取れない。彼女もまた「運命の誤差」を求めて、硬貨ならぬ小切手を投げているのかも知れない。
もうここまで来ると「しびれくらげ」などというタイトルは内容と何の関係もないけれども、映画内に出て来る週刊誌のグラビアに掲載された渥美マリの写真、その写真の彼女の肢体に対して注がれる男たちの欲望のまなざしをこそ作品化した、ちょっとしたメタ構造作品とは読み取れるだろう。「しびれくらげ」というタイトルも、そういうメタ構造の中にあるものだろう。