3.《ネタバレ》 キューブリックがこれまでで最も恐ろしい映画だと絶賛したそうだが、サイコサスペンスとしてよくできた作品。
反社会性パーソナリティ障害の犯人の不気味さがヒシヒシと迫ってくる。といっても、犯行のシミュレーションや失敗続きが少し滑稽で軽いタッチなので、おどろおどろしい感じはまったくない。日常に潜む狂気というようなものが、次第に正体を表す感じ。
消えた彼女は一体どうなってしまったのか、そのサスペンス性で最後まで引っ張られる。その謎が明かされるラストがインパクトがあって余韻が残る。
金の卵に閉じこめられた夢の話と、ラストの新聞記事の卵型の二人の写真が重なってくる。トンネルの暗闇や閉所でのサスキアの恐怖心や犯人の閉所恐怖症など、他にも伏線が巧妙に幾つも張られているのに感心する。何気ないシーンも、後になって意味を持っていることに気づく。
彼女がどうなったのか知りたければ、同じように睡眠薬入りのコーヒーを飲めという犯人の要求。
普通なら絶対拒絶するようなとんでもない話なのだけれど、レイモンがそれを受け入れても仕方ないかもと思わせるくらいの追い込まれ方なので、そんなことありえないとは感じさせない。
犯人への嫌悪感がまとわりつくような余韻の残るラストで、この後味の悪さは監督としてはしてやったりなのだろう。