2.《ネタバレ》 序盤のマグロ漁の実録シーンはハワード・ホークスの『虎鮫』には劣るものの、瑞々しい活気が画面に漲って素晴らしい。
甲板上で頭を打擲され解体されていく鮫がのたうつ生々しさは、後にベッド上でもがき苦しむ宇野重吉の姿とも重なるだろう。
被曝までの約20分間で描写される船員たちの生活ぶり・仕事ぶりが丹念でいい。
被曝の瞬間、無音の中に白い閃光が画面を覆う。その数秒後に轟音と爆風が船を襲う、という描写が迫真である。
白い灰が降る中を滑る福竜丸の合成ショットが不気味だ。
前半の動に対して、静の際立つ後半、米国側調査団と日本側医師団との問答を通訳が介す。
その事務的口調の冷徹な響き。
宇野らの柔和なキャラクターもまた、映画の抑制的なトーンを象っている。