1.貧しい農村から夢を持って北京にやってきたはずの登場人物たちは、世界に開放をアピールする中国とは裏腹に、誰もが閉じられた世界で生活に追われるだけの毎日を過ごす。そしてその生活に慣れてゆくことの怖さ。「世界」とはほど遠い「世界公園」という極めて閉じられた環境で各国の華やかな衣装を身に纏うダンサーと「世界公園」の警備主任のカップル。彼らはここに長くいすぎたために外国へ飛び立つ知り合いを見送ることしか出来ない。カメラがとらえる二人の長い沈黙が「どこにも行けない」「なにもできない」「なにも見えない」、そんな二人を浮かび上がらせる。北京オリンピックを控える中国において、しかしそのほとんどの人が生まれた地から出てゆくことなく一生を終えてしまう現実を若い男女の物語の中に露呈させる。携帯電話をかけたときに女の心情を表現するアニメーションは正直どうなんだろう?と思うものの、どおってことのないシーンの連なりがとても印象に残るいい映画でした。