4.《ネタバレ》 「〝フランケンシュタイン〟は死を扱ったコメディだ」とホエールは言います。
だから、映画を見たら笑ってほしかったのだそうだ。
〝ヒトの死〟は尊厳あるものとされているので、ホエールのバックグラウンドを知らなければ単に掟破りなやりすぎマンということになる。
が、〝ヒトの死〟を戯画化しなければやっていけないような経験が彼にはあって、それはもう、そんな経験をしてしまったら冗談でも言わなければ発狂してしまうよ、というような凄惨なものだった。ヒトは精神的に追い詰められると、冗談で回避しようとする生き物なのかな。
金網に引っかかったまま腐っていく戦友から、〝フランケンシュタイン〟が生まれた。
凄まじいなあ。
全体的に「収束の美学」みたいなものを感じました。「拡大」の時期がとうに過ぎ、人生の終わりのほうで、風呂敷を畳んで、大事な荷物を捨てて、去る時期が来たことを知ったとき。どのように去っていくか。どのように去りたいか。
ホエールは脳卒中による幻覚に悩まされるようにならなければ、もっと別の去り方をしたかもしれない。
コントロールできない幻覚の内容は、彼にとって耐えられないものばかりだったので、どんなに辛かったかと思う。思い出したくない過去のシーンを、いつなんどき見せられるかわからない状態は、拷問であろう。
庭師とホエールの関係がいったいなんであったのか、ラストの映画中映画シーンで示される。感動的…といえるかもしれない。
しつこくエンドロールを見ていたら、ホエール作の絵画(の本物)をジョエル・コーエンに借りたと書いてありました。…なんでそんなもの持っているんだ。アトリエにあった絵画の何点かはホエールが書いた本物ということです。