1.激動の戦後昭和(偽)史の中で異彩を放った伝説のゴト師たちの系譜を、その方法論から考察を進めながら同時に昭和史を批評的に語るという離れ業をドキュメント番組のような構成で、しかもパタパタ絵(スーパーライヴメーションというらしい)に実写を取り入れるという極めて特殊な方法で実践している。この、「昭和(偽)史」と「ドキュメンタリー構成」と「パタパタ絵」そして「押井守」というキーワードが、全部キャラとして立っていることがまず凄いのだが、そのことによる居心地の悪さも相当のものだ。まあ、はっきり言うと面白くない。それでも、これだけ野心的な作品を世に出したプロダクションIGの創作意欲には、本当に驚かされるし触発される。この作品はアニメでも出来ない実写映画でも出来ない、その間でしか出来ないことをやっているんだと思う。特に、イノセンスでもそうだったが押井監督の身体に対する感覚は、ここでも快速で突っ走ってる感がある。そうでなくてもこの映画は開始からしてすでに暴走モードで、吉本隆明の詩からディズニーランドまで、映像と言葉を駆使して何でも出す。その頂点がファーストフード業界と集団テロリスト化した立喰師たちとの仁義なき戦いだろう。ここはかなり面白かったのだけど、この映画の持つ「全部想定内」的な空間から抜け出せてたわけでもない。バカになるんだったら もっと徹底しなければ。いや、バカであることを演出した時点でもうダメなのかも。んー。