9.一見、タイトルからして優しいヒューマンドラマかと思うが見てみると良い意味で期待を裏切られた。最初から終盤までサスペンス風に進んでゆく作品。
見終わった後に話として並べてみると、特段目をひく部分があるわけではないが、何分見せ方が良くできている。
謎に包まれたまま始まり、所々で挿入される回想で余計に謎が深まる。推理する内にミスリードに引っ掛かる人も居るかもしれない。
物語の全容が気になって最後まで惹き付けられてしまうので、退屈だと感じる暇はないと言える。
見せ方以外で良いと思ったのは音楽である。弦楽器の演奏が、観客の不安感を煽るのに一役買っている。
重いテーマを扱っているが、そこで息苦しい映画にせずにサスペンスというエンターテイメント性を取り入れたのは考えあってのことであろう。
終盤全ての謎が明らかになった後はヒューマンドラマとして感動できるが、それまではサスペンステイストで進んでゆくので、常に頭を回転させながら観ていなくてはいけない作品。何も考えずにぼーっと見たいという時には適さないが、是非この世界観に浸って欲しいと思う。